23《フレイル》とは昔から「年をとるとからだが衰える」と考えられていました。そこで、「もう年だから、・・・・は要らない」というように、年齢で「老いているかどうか」を判断する傾向があります。けれども、年齢が同じでも、元気な方もいれば、老いが進んで心身が弱っている方もおられます。そこで、その方の年齢を物差しにするのではなく、実際の「老い(老化)」の程度(衰え方・弱り方)を物差しにして考えなければなりません。現在日本の医療の現場では、「老いによって心身が弱る」というあり方を「フレイル」と呼んでいます。そこで、医療や介護関係者は、「高齢になってもできるだけフレイルにならないように予防しよう」と呼びかけています。フレイルが医療に関係する点がもう一つあります。疾患に対する積極的な治療は、壮健な人にとっては益が多いですが、フレイルが進むと、「治療をした結果かえって害になった」ということが起きることがあると分かってきています。そこで、「フレイルがどのくらい進んでいるかによって、ある治療をするほうが良いか、しないほうが良いかを判定できないだろうか」という研究が始まっているのです。このようなわけで、フレイルになっているかどうか、なっている場合どのくらい進んでいるかを測る物差しが必要になります。本冊子がベースにしようとしている「臨床フレイル・スケール」はこのような物差し・尺度として開発されたものです。臨床フレイル・スケール臨床フレイル・スケールは、高齢になってもまだまだ元気に生活している段階から、フレイルが進んで人生の終りが近くなるまでを9段階に分けています。各段階についての詳しい説明は次頁以下にあります。各段階間の移行は連続的ですから、明確に線引きできるものではありません。臨床フレイル・スケールは私たちの心身の力が弱っていく程度を、どの程度周囲からの支援・介護が必要かによって区別しています。ですから次頁の説明で「支援が必要」等といっているのは、 病気やケガのために一時的に支援が必要になっていることは含みません。 個人差はありますが、あくまでも加齢に伴って衰えていく程度を測るものです。ですから、寝たきりになっている状態を見ただけで、「フレイルが相当進んでいる」と判断するのは適切ではありません。疾患や精神的状態、また事故のためにそうなっているのかもしれないからです。フレイルは進み方が軽度の場合、努力すればフレイル以前の状態まで戻ることもあると言われていますが、老いという衰え方ですので、さらに進んだ状態から「治る」(フレイルのない状態に戻る)ことはありません。
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