心積りノート考え方・書き方編
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●383-1-2 効果と治療時の辛さ【事例3】前項では、治療後に辛さが残る積極的治療について考えました。ここでは、治療中に「辛い・嫌だ」と本人が感じる場合について考えます。例えば、ある手術を受ければ治癒が見込まれ、しばらくはこれまでとほぼ同様の生活を続けられますが、手術前後の期間を含め、高齢者には痛かったり、苦しかったりする辛い時期が予想されるとしたら、どうしますか。心身があるところまで衰えた時のことを予想すると、「ここまで衰えたら、もう治療中の辛さも避けたい」と思う方が多いのではないでしょうか。ある高齢者の事例を考えましょうキミさんは、90歳を過ぎていて、中度から重度要介護の女性です。認知症も進んでいますが、家族は見分けられます。会話はあまりしなくなり、簡単な言葉しか出てきません。さて、ここのところ便にときどき血が混じるようになり、また、血が見えない時も「タール便」といって、体内の出血が便に混じったことによると考えられる状態の黒い便になっています。医療者は大腸がんを疑っています。このような場合、壮年期までの患者であれば、下部消化管の内視鏡検査をすることになります。しかし、内視鏡を挿入される辛さに、キミさんは耐えられないのではないかと判断されました。認知症が進んでいるので、我慢しなければならない理由が理解できないと思われました。実際、血液検査程度でさえも、説明すると、「痛いのは嫌だ」と答えていたのです。では、そういうご本人の気持ちがあっても、検査をぜひともしなければならない理由はあるでしょうか。例えば大腸がんだと分かり、その位置や大きさが分かったらそれに対する積極的治療を選択するでしょうか。否、手術だの抗がん剤だのという積極的な治療は、この方が壮年期であれば、大いに有益であった可能性が高いですが、心身の衰えが進んでいるこの方には適切とはいえないでしょう。キミさんの場合について、あなたはどう考えますか? ご家族と話し合ってみませんか。

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