心積りノート考え方・書き方編
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453-2-2 生命維持 人工呼吸器[人工呼吸器]生命維持について一般的な考え方は前項で説明しました。本項は、自力で呼吸ができなくなった場合の人工呼吸器をとりあげます。人工呼吸器は一般市民もよく知っている機器です。自力では生命を保つのに十分な酸素を呼吸によって取り入れることができない場合に、これを着けて酸素を補給します。非侵襲的なもの(口・鼻にマスクのようにつけて、空気を送り込む)と、侵襲的なもの(首に穴をあける気管切開をしてそこに管を着けるか、喉に挿管するかして、空気を送りこむ)とがありますが、ここではより厳しい状況でも効果がある後者を念頭において考えます。侵襲的人工呼吸器が使われる場合、神経難病で自力呼吸はできなくなったが、意識は保たれているといった場合もありますが、多くの場合は呼吸困難だけではなく、他の辛い症状も伴っています。意識が混濁していたり、意識不明になっていたりすることも多いでしょう。高齢で衰えてきているところで、人工呼吸器を着けないと生命が保てないという場合、回復の可能性がどうなのかが、大事なチェックポイントになります。老いの程度が《全介助》 以上になっている場合、回復は難しいことが多く、また、呼吸器により回復したとしても、本人の人生にとって益になるほどの回復は一般に無理ですから、本人の人生によかれという目標設定で考えたら、多くの場合人工呼吸器はおすすめできません。自力呼吸が落ちてきたところで、 「寿命だ」 と考えるのが、「人生を全うする」という観点ではよりよいと思われます。しかし、ここを乗り切れば、回復が可能であり、その先には「生きててよかった」と評価できる日々が望める状況でしたら、人工呼吸器は本人の人生を支えるよい手段となるでしょう。ですから、こうした場合には呼吸器を着けることがおすすめとなります。おすすめできない場合とおすすめする場合との間に、本人の人生観・価値観によって対応が異なってくるであろう場合があります。本人を中心に、家族や医療者でよく話し合って、本人の人生に相応しい心積りを目指してください。

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