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人工呼吸選択意思決定ノート

このノートの流れ > STEP3 考えるための情報収集 > 考えるポイント1-2 TLcSになっても「内なる世界」で豊かに生きられる?
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考えるための情報収集

人工呼吸器はつけたほうがいいの?

今、どのくらいスムースな意思疎通ができてる?
今後さらに症状が進むと、まだ動く筋肉や目線などから、あなたの意思を読み取る人が必要になる。目線で動くような特殊な機能のパソコンも必要かもしれない。どちらにしてもその状態で、意思疎通が十分にできてると思う?きっとそうじゃない。
発言を読み取る人とあなたの文化が違うと、なかなか思うことが伝わらない場合もある。知り合いにもそういう状況で意思疎通をしている人たちがいるけど、長い時間をかけて伝え方を培ってきたんだと思う。

 

伝えられなかった思いを「このぐらい伝わればよしとしよう」と折り合いをつけてきたんだろうね。全ては「通じない」という思いに自分を慣らす訓練をされてきたんだろう。
あなたにもその頃には、通じなかったことがプールされた「内なる世界」が形成され、その世界でいろいろなことを考えるようになってるんじゃないかな?これは、誰もが持っている世界だけど、きっとあなたの「内なる世界」はもっとずっと豊かなんじゃないかな。今はまだ外の世界でも大いに活動しているけど、「内なる世界」も成長しつつあり、そちらでも、あなたは生きている。今の生活では、「内なる世界」はどのくらいの割合かな?

 

TLcSになったら、「内なる世界」が、あなたが活動できる唯一の世界になる。「内なる世界」でも豊かに生きることを今から練習しておくと、そちらに全面移行しても豊かに生きられるだろう。外からの情報は入ってくるから、そのつながりも全く断たれたわけではないけど、活動はできない。でも身体的には、あなたは生きている。「内なる世界」で生きるあなたは、ある意味、身体を離脱した境地にある。つまり、現実社会を眺めて「内なる世界」で活動するということだ。古の哲学者は、外の世界の中で何かをする、ということを越えて、ただ見るだけ、眺めるだけの存在を「もっとも質の高い生」としたそうだよ。

 
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